ムーンリバー 月のパワーを解き明かす

モーツァルトの音楽を赤ん坊に聞かせると泣き止む、日本酒の酒蔵でモーツァルトを演奏すると味がまろやかになるなど目に見えない影響が「よい音楽」にはあります。一方、月にも音楽と同様に見えない影響力があります。月は音楽にとってもよいパートナーでした。日本では歌人、菅原道長が月から受けたインスピレーションで恋の歌を作っています。また、月の砂漠(童謡)、月の光(ドビッシー)、ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)、ムーン・リバー(ヘンリー・マンシーニ)など月を題材にして創られた名曲は数知れません。月はわれわれの創造力をかき立てたり、ロマンチックにしたり、また悪い面で影響を与えたりと、いろいろなパワーを秘めています。今回は月の魔力について調べてみました。                   

月光浴
               

宇宙から帰還した飛行士は、その後伝道師になったり、政治家になったり、またスペースシャトルに搭乗した秋山さんのように農業に従事したり、人生観が変わってしまうのか、宇宙工学から離れた世界に移ることがよく聞かれます。地球を宇宙から見たためか、または月光を間近で浴びたためか、宇宙へ行った人はその後の人生を大きく変えています。日光浴で私たちはビタミンEを吸収したり気を晴らしたりと、必ずしも紫外線の害以外にプラスの面を人間にもたらします。一方、月光は恋人達の想いを一層強めたり、クレオパトラのように月光浴で薬草油の美容法の効果を高めたり、さらに満月をイメージすることで精神統一を図ったりと、様々な効用が知られています。月が精神面に作用するように、商談や会議でよい結果を得るために満月の日をあえて選ぶことさえあります。反対に月光は狼男伝説にあるように人間を狂気に変えたりもします。

満月と狼男                            

狼男の屋敷科学的に言うと狼男はあながち伝説だけとは言いきれません。女性の月経がその名の通り月齢サイクルとぴったり一致している(両方とも29.531日)点、満月に出産が多い点、さらに満月には殺人や放火が多発するなど月の活動が人間に影響を与えているのはデータから判明しています。では狼男の伝説はどのようにできたかを仮説しますと、人が一般に持っているポルフィンという物質が代謝異常を起こし、皮膚の下に蓄積されると、それが月光により多毛症を引き起こしたり、からだの細胞を破壊されたりすると推定されています。この結果、ある特殊体質の人は満月時に月光を浴び続けることにより、外見が変容することがあり得ます。また、現代の精神医学でも満月時に錯乱し、凶暴になるライカーンスロビー(狼症候群)という患者事例がたまに報告されています。実は「切り裂きジャック」の犯行も月齢と関連していたと報告されていますし、神戸の痛ましい小学生殺害事件が起こったのも満月の数日後です。

月の影響力とは何?

では月の何が人間に影響を及ぼすのか?月の魔力の原因を探ってみます。太陽の影響では人は暑くて夏バテになったり、寒くて風邪をひいたりします。人間の身体は80%が水分でできています。その中で血液は海水によく似た性質の「管内液」を持っています。ご存知のように海には月の引力の影響で潮汐現象があります。同様な現象が体内でも起こり、人間の心理や行動に変化を与えます。この現象は生物学的に「バイオタイド理論」と呼ばれています。引力の影響が大きい満月と新月時では、人は気分が高揚し、転じて恋に陥ったり、または暴力的になったりします。一方、引力の影響が小さい上弦、下弦時には人は緊張感が弱まり、転じて交通事故が起きたり、憂鬱になって自殺を図る要因となっています。この傾向は警察庁が発表したデータにもはっきりと現れています。

自然にも与える影響力        

潮の干潮以外にもっとも大きな影響はなんといっても地震です。地球の地殻運動に起因する地震と月は一見関係ないようですが、やはり月の引力が地震を誘発する要因の一つとなっているのは数々のデータが証明しています。MITの地球物理学チームは米国西海岸の地震多発と月の引力との関係を調査しました。彼らはカリフォルニアのみならず、トルコで起きた計2670回の地震と月の相関関係を統計的に分析しました。驚くことにマグニチュード3以上の地震は満月か新月、もしくは上弦/下弦の当日かその前後に発生していました。この発表をもとに日本の地震学者が調査したところ、89年10月から90年1月にかけて起きた群発地震の大半は、月が震源地の真上か真後ろを通る子午線を通過したときに起きていることが判明しました。さらに大きな地震を調べてみると関東大地震は下弦の当日、最近起きた阪神大地震は満月の当日でした 。          

名曲「ムーンリバー」の名付け理由

映画「ティファニーで朝食を」最後に気楽な話しをひとつ。アカデミー賞主題歌賞を受賞した映画「ティファニーで朝食を」の主題歌「ムーン・リバー」。初めにヘンリー・マンシーニによって作曲されたテーマ曲には歌詞がなく、作詞家ジョニー・アーサーを尋ねて詩をつけて貰うことになりました。彼は映画の原作を読み、まさに月の影響を受けているかのような主人公ホリーの気ままな生き方を、川の流れに例えて詩に綴りました。歌詞はできたものの、よいタイトルが思い浮かびません。最初「ジューン・リバー」(6月の川)や「ブルー・リバー」などゴロのよいものを考えていましたが、恐らく名曲「ブルー・ムーン」が頭をよぎったのか、なんとなくホリーのミステリアスな性格が表現できそうな「ムーン・リバー」に落ちつきました。だからこのタイトルは月にある海に対比して月の川を指しているのではありません。ただなんとなく月の影響を受けた?作詞家がその時の気分でつけたようです。  (nao)   

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